PS(DS?)版からの捏造です
※変なところから始まって変なところで終わります
※短いわりに後書きが長いです
pixivこちらの絵から勝手にネタをいただきました
※上記の絵の右下(立っている勇者と岩に寄りかかるピサロ)のイメージです







 持ち手を握る右手も、柄に添えた左手も、震えてなんていない。
 なのに、剣を構えた腕が動かない。
 憎しみを失くしたわけじゃない。
 復讐をやめたわけでもない。
 ただ   哀しかった。
 目の前で力尽き果てようとしている男を、斬る、そのことが。
 運命に翻弄され続けた、この魔族の男の命を、奪うのが自分でなくてはならないその運命が   ただひたすらに、哀しい。
 涙が零れるような悲しみではない。
 痛みを伴うような悲しみではない。
 例えるならば、果ての無い荒野に独り佇むような   寂莫と空虚の入り混じった哀しみが、心を静かに波打たせる。

「……本当に、これでいいのか?」
 無意識の問いかけは何処に向かうでもなく、自分の胸にすとんと落ちてきた。
 耳を疑ったような面持ちで、眼下の深紅が惑いを孕む。
 あの紅は、一族の中でも異端の表れであったのだと、魔族を愛した森の娘は言っていた。



    山向こうにゆっくりと沈む、茜の太陽によく似ている。



 全ての、始まりの日の記憶。
 無邪気に告げたその時にだけ剥がれた、仮面の下の本当の彼を。
 一瞬の戸惑いに揺れた、あの男の瞳の赤を、どうして今更思い返してしまうのだろう。






とあるDQ4の二次長編小説にとてつもなく影響を受け(主に"鏡合わせ"としての二人)、とあるイラストに出逢ったことで、私の中のDQ4はこんな形をとりました、という結果へ至る一歩手前の二人。
()は、勇者にとっては夕焼けの色。一日の終わりの色。ピサロにとっては血の色。命の終わりの色。書いていてそんなイメージを持ちました。 もっと極端にいえば、愛すべき色と忌むべき(?)色。どこまでも鏡合わせの二人。だからこそ互いに互いを殺す運命を持っている。
……もしもこれの続きを書くとしたら、結局どちらも殺さずに終わるんですが。「失くしたわけじゃない」なんて言いながら、本当はもう無いんです。気づけないだけで。
勇者と呼ばれた少年は剣を下ろし、魔族の男は息をし続ける。ひょっとしたらいつか手を取る日が来るのかもしれないし、二度と出逢うことは無いのかもしれない。けれどどこかで繋がっている。

ページの先頭にも書きましたが、pixivこちらの絵から勝手にネタをいただきました。
これを描かれた方のサイト(本家)にも絵の大まかなあらすじがあったんですが、内容は結構違います。
絵の公式(?)は本家の文章ですので、お間違えの無いようにお願いしますー。

私的には、真紅と深紅の違いは美しく鮮やかな色と優しく深みのある色です。エンディング直前だからという理由(だけ)で、ピサロの瞳は後者。
[ 12.03.18 ]


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